シェン チェン 経済特区

2015-01-07 23:27中国・深圳(シェンジェン)のアートスペースOCATで2014年12月13日から26日まで上映企画webDICEでは、この上映企画に参加した浅井隆による深圳そして香港のレポートを掲載する。12月19日・羽田から深圳へ11月に中国の映画監督ロウ・イエの事務所からメールがあり、中国に来ないかという。日本から僕とフランスから映画制作とセールスエージェント行っているコープロダクションオフィスのフィリップ・ボベールを招聘し、それぞれ日本映画、ヨーロッパ、ロウ・イエは中国映画選んで上映する企画だという。最初はてっきり北京でのイベントだと思っていたが場所は深圳だという。日本語だとシンセン、中国語だと深圳、シェンジェンと発音する。このレポートでは、言語発音に忠実にシェンジェンと記すことにする。飛行機代は先方が出してくれるというので、ぜひ行きたいと思った。調べるとシェンジェンに行くには香港まで飛行機であとは陸路で行くのが一番便利らしい。香港といえば、webDICEでも2回レポートをしたが通称「雨傘革命」のデモの最中である、香港と中国本土と二つの中国を見ることができるのなら絶対に行きたくなった。結果的には、日本を発つ時点ではデモは終わっていたのだが、それでも弾丸トラベルで二つの中国のフィルムメーカーたちに会えたのは有意義だった。イベントが開催される場所はシェンジェンのOCATという場所だという。このレポートのためにインスタグラムをはじめたのだが、写真を撮ってはツイッターと連携していたので、帰国後社員にコメントなしの写真が連投されているのでだいぶツイッターのフォロワーが減ってますよと指摘されてしまった。反省。空港からシェンジェンへはスタッフが探してくれたブログに従って、リアルロールプレイングゲームとしてバスと電車を乗り継いで行くことに。ここから写真撮影禁止のサインが、万が一のことを考え写真撮影を控える。iPhoneを見ていると、地下にある香港の出国審査を出ると、キャリアが香港から中国本土のキャリアへ変わった。電波を見事にコントロールしていることに感心する。次に中国本土の入国審査。かつてドキュメンタリー映画『天安門』などを配給していたので、ブラックリストに載っていないかとわずかに心配するが無事入国。無事、中国本土へ。ブログに書いてあったとおり、タクシー運転手が何人も寄ってくる。ここでも、写真撮影はやばそうな雰囲気だったので控える。羽田空港で、香港ドル1万円分、中国元5000円分を両替してきた。中国ではホテル代や食事代はあまりかからないだろうという読みで、少ない両替にした。だが、ここでは、まずクレジットカードが使えないだろうし、何かあれば頼れるのは現金だと考え、両替屋で1万円を人民元に両替すると460民元だった。羽田だと400民元だった。手数料が違うのだが。現地の方が両替率は良い。地下鉄の駅から地上に出るが、さて、どちらにいけばいいのか。目的地OCATは、事前の情報だと駅に近いのだが。道路の警官やバス停で待っている人に聞き、キャリーバッグをゴロゴロしながら教えられた方向に歩く。しばらくして、OCATの大きな看板を発見、ようやく着いたようだ。午後4時頃、自宅から12時間ほどここまでかかる。しかし、誰も迎える人もいず、自分はなぜ、ここを歩いているのだろうかとふと思う。まあ、こちらもあえて迎えも頼まず、なんとかたどり着けるだろうとふらっと出発した旅だったわけだが。さてOCATの入り口に着いたはいいが、どこが受付かわからない。誰もこのイベントの事務局がどこにあるのかわからない。広い敷地内には、カフェやレストラン、ギャラリーやイベントスペースなどが広い敷地の中に集まっている。横浜赤レンガ倉庫のようであり、BANKARTのようであり、小さな都現美のようであり、香港、中国のボーダーを越えてきたにしては、アートとカルチャーとカフェがあるなんだか親近感を覚える場所だ。この時は雨が降り始めてきたため写真をあまり撮らなかったので、どんな感じかはこちらのブログを見てください。デザインオフィスのような入り口を見つけた。でもそこは不動産のデベロッパーの事務所のようである。いろいろ電話をしてもらい、ようやくOCATの事務所に案内してもらいたどり着く。さすがにお腹が減っていたので、OCATの敷地内にある刀削麺屋に連れて行ってもらう。ここのオーナーは北京のデザイナーだという。ホテルまでタクシーで送ってもらい、ロビーでロウ・イエと再会。フランスから来ているフィリップは、ボーダーで1時間ほど待たされ、今、ホテルへ迎えの車で向かっているらしいのでとりあえずチェックイン。部屋で、ネットをホテルのインターネット回線を経由したWi-Fiでメールをチェックしようとしたら繋がらない。フロントに電話をしてサービスを部屋に呼んでネットには繋がったが、Gmailを見ることができない。iPhoneのGmailは見ることができた。フィリップもホテルに着き、OCATスタッフのチェン・レオ・リーとロウ・イエが選んだ2本の映画『The Night』『DOLL』の監督ジョウ・ハオとウォン・メンと中華料理屋へ。シェンジェンには韓国人が多いので焼肉屋という選択肢も勧められたが、中国ということで中華料理屋を選ぶ。そこで、インスタをアップしているのを見て、スタッフのチェン・レオ・リーが中国ではインスタは禁止されているという。でも本土に入ってからもずっとインスタをアップし続けていた。どうやら、僕のIPhoneは日本のSIMCARDで中国ではローミングで使用しているので中国の検閲をすり抜けているようだ。聞くと、グーグル検索もツイッターもダメ。ということで、先ほど部屋でメールをMacでチェックできなかったのはGmailだったせいらしい。帰国後、12月30日のネットの記事で中国の人はネットで世界から隔離されているのかというとそうでもなく、VPN(ヴァーチャル・プライベート・ネットワーク)で世界と繋がっているという。どうやってVPNを使用するのかは詳しくわからないが、月々そのための通信料を払っているという。香港のデモの状況は知っているのかと聞くと、「もちろん知っている、香港に行って自分の眼で見てきたから」とチェン・レオ・リーは答えた。確かに香港、中国のボーダーは旅行者というよりも手ぶらの人々が行き来して混雑していた。クリスマスシーズンの今は、シェンジェンの人たちは週末に大挙して香港に遊びに行くのだという。ロウ・イエが実は自分はベジタリアンになったと言う。その理由は今まで肉を十分食べ過ぎたので、もう食べなくてもいいかなと体が言っているからだという。急にではなく、ここ数年かけて徐々にベジタリアンになったという。そこで、フィリップが、タンパク質を体に得るために動物ではなく、虫を食べる映画の話をし始めた。それはコペンハーゲンの友人のアンドレアス・ヨハンセンが製作中のドキュメンタリーの話でしょ、と僕がその話をつなぐ。その映画は、11月にフィリップスも参加していたCPH:DOXでプレゼンされた企画だった。牛や豚を食用として育てるには大量の餌と水を必要とする、その点、同じ量のたんぱく質を人間が摂取するには虫が最もエコであると。アンドレアスは世界中の虫を食べる人たちを取材し、日本の長野県にもつい先日取材に来ていた。アムステルダムには食用の虫を育成する工場というか虫飼育場がすでに未来を見据えて存在し、映画ではそこも取材していた。ロウ・イエは、「自分の体がいつかは虫のタンパク質を欲しがるかもね」と笑っていた。部屋に戻り、中国のネット規制の実態を試してみた。確かにグーグルもGmailも、ツイッターもインスタもアクセスできないが、日本のヤフーのトップページにはアクセスできた。そこで「天安門事件」と検索すると、トップに表示された中国語サイトはアクセスできず、日本語のウィキペディアの「天安門事件」にはアクセスできた。そこで、webDICEはどうだろうと思い、ヤフーで検索し、アクセスすると、なんと名誉なこと!?にアクセスできなかった。12月20日・深圳OCATでのトークショー翌日の12月20日は3時からトークショーがあるので、OCAT内の鍋料理屋で昼食、みんなそれほどお腹が空いてないので鍋は頼まず、居酒屋に出てくるような料理を注文。ソニーが上映中止をした『ジ・インタビュー』についてフィリップが「アメリカで上映中止を決めたシネコンはAMC」だったと。僕は「確かに中国のワンダグループに買収されたAMCは上映中止を決めたが、他のシネコンも上映中止にしたので、今回の件に関しては、中国と北朝鮮は関係ないのでは」と。その後ハリウッドがいかに中国マーケットを意識しているかに。ハリウッド映画のマーケットとしては2012年にはアメリカの次、日本を抜いて中国が第2位になっている。『パシフィック・リム』では香港を舞台にしたり、中国人が活躍したりと、マーケットに合わせてハリウッドは作品を作っている。まあ、商品としては正しい作り方と言えるだろう。ワンダグループが米国で2番目の館数と言われるシネコンAMCのオーナーということは、ハリウッド映画をアメリカ人がAMCで観れば観る程、中国企業を設けさせていることをどれだけのアメリカ人が意識しているのだろうか。かつて、ハリウッド映画がアメリカのイメージ戦略として、自由で豊かなアメリカ像を世界にある意味"洗脳”する装置として使われたように、将来、自由ではないかもしれないけど豊かでエネルギッシュで聡明な中国像をアメリカに植え付けるプラットフォームとして機能するに違いない。ワンダグループが2016年に海ではヨットレースが行なわれる青島で国際映画祭を開催するという話題に。ディレクターを、ニューヨークから呼ぶとロウ・イエ。ニューヨーク映画祭を退任したプログラム・ディレクターのリチャード・ペーニャなのかなとフィリップ。カンヌとずらして秋頃の開催らしい。中国には上海や北京など国際映画祭があるが、ラインナップは大きな話題にならない。青島国際映画祭はアート系にも焦点をあてて、中国のカンヌ映画祭を目指すのかと話し合う。「ところで、中国のアカデミー外国語映画賞の代表作を知ってる?」とロウ・イエ。ロウ・イエの最近の作品を世界に売っているワイルド・バンチが同じくセールスしている『WOLF TOTEM』だという。監督は中国で上映禁止となった『セブン・イヤーズ・イン・チベット』のジャン・ジャック・アノー。モンゴルで撮影した狼の動物映画ということで中国政府としては思想的問題なしで、中国がメインの資本でフランスとの合作。「アカデミー外国語映画の代表がフランス人の映画だよ、でもフランス映画の代表が中国人監督の作品になる日が来るかもね」とフランスでフランス語映画『パリ、ただよう花』を撮った経験のあるロウ・イエが言う。ちなみに、最近中国では、映画のポスターや冒頭に政府の指導で英語表記をするようになっているという。ロウ・イエの『二重生活』の中国語タイトルは『浮城謎事』、英語タイトルは『MYSTERY』という。ここで簡単にOCATの説明を受ける。OCATはOverseas Chinese Town, Contemporary Art Terminalの略。ここシェンジェンに10年前にできて、現在は、上海、北京、西安、武漢にある。公共施設のようであるが、Overseas Chinese Townという民間の不動産デペロッパーをメインとする会社が非営利で運営している組織で、政府の助成金を受けているという。今回の映画をセレクトする際にも、あまりにも性的に過激なものは避けてくれという要望があったが、シェンジェンは政府のある北京から離れているので、表現の自由度はある程度あるという。基本は、現代アートやパフォーマンスの企画や、今回のような映画の上映も行い、海外と中国の架け橋になるターミナルだと今回のキュレーターのキャロル・ルウが説明してくれた。空間が広い。事務所ひとつとっても、アップリンクの映画館くらいある。敷地内にカフェやレストラン、雑貨屋などが散在し、日本で抱く中国のイメージと違い垢抜けていて、スタッフも世界の映画やアートの知識が豊富だ。まず、それぞれどの映画を今回の企画に選んだかの紹介。僕は『タリウム少女の毒殺日記」と『いわきノート』、そしてフィリップはプロデュースをしたロイ・アンダーソン監督の『実存を省みる枝の上の鳩』とリューベン・オストルンド監督の『ツーリスト』。2作品とも東京国際映画祭で上映され、日本公開が決まっている。ロウ・イエはベルリン国際映画祭でも上映されたジョウ・ハオ監督の『The Night』とウォン・メン監督の『DOLL』。それぞれノーバジェット映画で2作とも監督自身が主演している。ロウ・イエからスクリーン・クォータ制度は日本とフランスではあるのかと質問。スクリーン・クォータ制度とは、自国の映画産業を守るため、外国の映画の上映を制限する制度のこと。ロウ・イエによると現在中国では年間34本の外国映画しか上映できないという。当然、その20本にはアート系映画の入る余地はなく、ハリウッド映画が中心となっていく。フィリップによるとフランスにもあり、外国映画の上映は国内全スクリーンの40%以内に限られるという。さらにテレビ放送にも外国映画放送枠に制限があるという。僕は、日本はないと答える。「外国映画を規制しなくとも、2006年を境に興行では公開作品数において邦画の方が上回っている」と説明する。エンタメではなくアート系映画をどう中国で盛り上げていくかという話題で、ロウ・イエは中国では製作費が高騰してなかなか新しい監督が出てくるのが難しいと述べ、外国映画も結局ハリウッド映画中心で観客が育たないという。僕は、「日本のように外国映画を制限しなくとも、結局時間をかければ自国の映画を観る観客は育つので、スクリーン・クォータ制度はあまり意味がないのでは」と述べた。ロウ・イエは、中国の問題は興行に問題にあるという。アート系の作品をかける映画館というものが存在せず、結局シネコンでエンタメだけの作品ばかりになるという。僕は、「ここOCATは素晴らしい。東京にあるアップリンクの映画館は3スクリーンあるがどれもここのロビーくらいの大きさなので、例えば、OCATの敷地に常設の映画館を作ってはどうか、その場合、アートだけでなくフィルム上映するということで、OCAFT、コンテポラリー・アート&フィルム・ターミナルとしてはどうか」と提案する。「さらにOCATは現在中国国内にここを含め5箇所あるので、それだけでもアート系の映画を興行するチェーンができるのでは」とも加え、司会のOCATのソン・イーチェンに目線を振ると「私には、決定権がないわ」と真面目に答えられた。中国でのパブリシティ、マーケティングの話題に。日本では最近、ブロックバスターのエンタメ系の映画は頭打ちかもしれないが、アート系の映画は作品に力があれば、観客がSNSでその感想を拡散してくれるので、ヒットしている傾向があり、さらに外国映画においては映画ファンはインターネットでリアルタイムで情報を得ることができると話す。中国ではまだそこが制限されているのはわかるが、このトークショーにこれだけの人が集まるということは映画に関心がある人が多いので、今後エンタメ以外にもアート系のインディペンデント映画も絶対人気が出てくる、と述べる。ロウ・イエの『二重生活』は検閲で最後まで電影局ともめていた。カンヌで上映したバージョンでは当局の許可が出ず、短い時間だが暴力シーンをカットし、ロウ・イエは、それに抗議する意味を込めてクレジットから自分の名前を外して中国では上映した。それはネットなどでの話題作りのためかと聞くと、「それは違う、本当に抗議するためにそうした」という。『天安門、恋人たち』を無断でカンヌで上映したことと、その内容、具体的には当局は指定しないが、おそらく天安門事件に触れていることと、中国では過激とされるベッドシーンのためにロウ・イエは5年間中国国内で映画の製作も上映も禁じられていた。その5年間、ロウ・イエは映画監督として海外に製作の道を求め、『スプリング・フィーバー』『パリ、ただよう花』を監督している。両作品とも中国での撮影シーンがあるが、中国で公開はできないが外国映画としてなら中国での撮影は許されている。禁令が解け、中国でロウ・イエが最初に作ったのが『二重生活』である。今の中国のマーケットを考えると、いわゆるアート系作品では映画館ではかけられないので、エンタメの要素として英語タイトルどおり「ミステリー」というジャンル映画の制約の中で、いかに作家性を発揮するかに挑戦したという。去年のベルリン映画祭で上映され、台湾の金馬賞でグランプリを受賞した『ブラインド・マッサージ(英題)』は、実は完成は後になったが『二重生活』より前の企画で、アート系によっていて、『二重生活』の方が、エンタメと作家性の両立を狙った作品だという。Q&Aになり、観客が「インディペンデント映画を作るのが難しいことはわかりましたが、映画を作ってお金を儲けてやろうという考えで映画監督になることをどう思いますか?」と質問した。僕は、「このOCATをみてください。僕は昨日、刀削麺を食べましたがそこのオーナーは北京のデザイナーだと言います。ここには、建築事務所やデザイン事務所はありますが、映画の事務所はありません、今、中国でお金を儲けるのならデザイナーというのがいいのではないでしょうか」と答えた。続けて「でも、考えてみてください、中国政府はなぜ映画を検閲し規制するのでしょうか。政府は刀削麺屋さんは規制しません。なぜなら政府は映画には世の中を変える力があることを知っているからです。であるならば、映画によって自由を訴えたり、世の中を変えようと思うなら映画監督になるのもありだと思います」と述べると、一気に観客全員から拍手がわき起こった。ロウ・イエが苦笑いをしながら「あまり過激なことは気をつけて」にたしなめられた。最後に観客に、この中でロウ・イエの『ふたりの人魚』を海賊版DVDで見た人はと問うと、8割くらいの人が手をあげる。ロウ・イエの『ふたりの人魚』は上映禁止処分を受けた作品なのでDVDでしか観ることができない。次に、これも上映されていない『スプリング・フィーバー』は?と聞くと四分の一くらい、映画館で公開された『二重生活』はというと6割くらい、最後に『ブラインド・マッサージ』はと7割くらいの観客が手をあげた。『ブラインド・マッサージ』は、まだ公開されたばかりで映画館で観る観客がこんなにもいるということだ。観客の大半はロウ・イエのファンで、トーク終了後、多くの特に若い女性ファンがロウ・イエの周りを取り囲みサインを求めていた。彼の次回作をフィリップはロウ・イエと共にプロデュースするという。僕も誘われたが来年は他に制作の予定があるのでと断る。食事後、夜のOCATを散歩する。ロウ・イエとフィリップは、ホウ・ハウと次回作の打ち合わせに。カフェラテのトールが26人民元、1人民元が約20円なので、520円なり。パソコンを見ている人、カップル、グループなど、結構店内は賑わっている。ちなみに香港の空港で買ったカフェラテは同じ26香港ドルだが、1香港ドルが15円なので、390円と中国のスタバの方が高い。明日は、朝に香港に移動するので中国最後の夜ということで、映画を観にタクシーで繁華街へ。観ることにしたのは、駅の広告で見たチアン・ウェン監督最新作『GONE WITH THE BULLETS』。2Dが90人民元、3Dが130人民元。3Dを選ぶ。後で聞くとこの値段は公開時なので高いそうだ。しかし20円を掛けると、1800円と2600円。字幕なしなので映画の内容は正確に把握はできないが、1920年代の上海を舞台にした字幕なしでも楽しめる3D作品だが、紙芝居が展開するような構図で映画が展開していく、一つのスタイルはある作品。音楽はあとでネットで調べてわかったが久石譲氏が担当している。翌朝、ロウ・イエとこの映画の話をするが、チアン・ウェンは『鬼が来た!』でロウ・イエの5年を上回る8年間中国政府から映画製作・上映を禁止されていた。僕が見た夜の8時台の回は40人ほどの観客だったが、最初の2週間はほぼ満席にならないと製作費の50億円は回収できないだろうと言われていて、映画のレビューもよくなく、厳しいだろうという。確かにこの1作をみても中国映画業界の勢いはわかる。新作とはいえ1800円と日本と変わらない料金で、3Dでは日本以上になり、それに中国の映画観客人口を掛け算すると、確かにハリウッド映画のマーケットは日本を上回っているのはわかる。またその興収の高さにより、ヒットすれば儲けも大きいわけで、そのため製作費も高騰しているという。ロウ・イエの『二重生活』の製作費はと聞くと。4億円だという。ロウ・イエとフィリップが企画している全くの新人のホウ・ハオの新作は2億円の予定だという。ロウ・イエとは、いつか『ふたりの人魚』以来、もう一度いっしょに映画を作ろうと話していた。僕は、これまでは、日本人キャストやスタッフで日本で撮影して、日本のマーケットで製作費を主に回収することを考えていたが、中国の爆発している映画マーケットをターゲットに作った方が挑戦しがいがあると今回の旅で考えを変えた。ただ、今までのようにアート色の強い映画ではなく、ロウ・イエとはアート系インディーズ映画とエンタメの間を狙って作ろうと、観客に支持されてヒットする映画を作ろうと話し合った。どんな監督の作品がそうかというと、日本で言えば、野村芳太郎、神代辰巳、深作欣二などエンタメと作家性が両方ある監督をロウ・イエは上げた。また最近では、監督では吉田大八、周防正行などをあげた。具体的にどんな作品をということで話し合い、では『ゴッドファーザー』はどうだろう」とロウ・イエ。「予算が高すぎる」と僕はすぐに反応したが、後で考えるとチャン・ツィイーと仲村トオを起用し満州を舞台に大作である『パープル・バタフライ』を撮ったロウ・イエなら、そして今の中国映画の予算を考えると『ゴッドファーザー』というのはひとつのロールモデルかもしれないと思った。12月21日・深圳から香港へ『二重生活』の1月のプロモーションで来日してもらうロウ・イエと再会を約束し、OCATが用意した車でボーダーまで送ってもらう。行きに来たボーダーとは違うラクマチュン(落馬州)へ。クリスマス前の12月21日日曜日ということもあり、すごい人が中国から香港へ移動している。手ぶらの人が多いので、香港に宿泊するわけでなく日帰りなのだろう。中国を出国して香港に入国するのに、とにかく混んでいるので1時間ほど列に並ぶ。iPhoneを見ると、またキャリアが中国から香港に変わった。周りを見ているとSIMフリーのスマホの中国のSIMを取り出し、香港のSIMに替えている。しかし、普通に並んでいるのだが、中国人はなぜか後ろから来てどんどん僕の前に割り込むというか、ごく自然に追い抜かれていく。映画『イロイロ ぬくもりの記憶』では、シンガポールの家庭にフィリピンからきた家政婦がいたが、香港では日曜日にはセントラルに集まり、情報交換やら弁当を食べたり、トランプしたりといたるところに座り込んで集っている。夕方に約束している映画プロデューサーのジェニー・スエンと会うまで少し時間があるので、アップリンクのスタッフが教えてくれた『恋する惑星』に出てくるエレベーターとしばしの観光。香港には何度か映画祭などで来ているがこのエレベーターに乗るのは初めて。後で会うジェニーに聞いた話だが『恋する惑星』のクリストファー・ドイルはこのエスカレーターの近くにアパートがあり、映画の撮影の一部は彼の部屋で行なわれたと言う。次に、スタッフがアート観光スポットとしてオススメのPMQへ。ここは、たぶん学校の後を利用していて教室にクリエイターたちのショップや工房やカフェがある、世田谷ものつくり学校、3331をもう少し商業的にした場所。そろそろ時間なのでホテルへ戻る。ジェニーとは11月のコペンハーゲンの映画祭テーマは香港に住む4世代の人物にフォーカスを合わせ、最近起きた香港のデモまでを追っている。デモについてのドキュメンタリーではなく、デモ以前から4世代を追いかけていたらデモが起きて、学生のデモにそれぞれの人物が訪れ、デモが終わって元の香港に戻るまでの4人を追いかけている。彼女の友人のアメリカ人のミュージシャン、ジェロームと合流し、夕食へ。香港が中国返還され、ウォン・カーウァイに代表される香港映画は無くなったということを彼女と話して実感した。webDICEに掲載した、デモの写真を撮ったフォトグラファーのエリックが言うようにシェンジェン市民と香港市民は対照的だ。シェンジェンは地理的に政治の中心の北京から離れ、しかも経済特区にため、経済的には豊かで、土地も広いのでのびのびとしているし、香港と違い、まだまだ高層ビルが建設される勢いがある。ビル・ゲイツは一方、香港は、イギリス領の時に比べ、中国返還後は、今回のデモに象徴されるように、選挙による代議士の選択の自由もなくなり、本土から多くの人が香港にやって来るため、肩身がせまいように感じているらしい。例えば、トニー・レオンは「平和的に願いを訴える全ての香港人を支持する。政府が攻撃的な方法を使ったことに抗議したい。政府は誠意を見せ、速やかに平和的な対話の場を設けるべきだ」と新聞のインタビューに答えている。他にもアンディ・ラウやチョウ・ユンファがデモの支持を表明しているが、彼らはトップスターだからできる発言。ジェニー曰く、香港映画のマーケットは香港だけではなく、中国本土がメインになっている。そのため、あからさまに中国政府に抗議するスターには映画出演の依頼が来なくなる。出資をする中国の会社が反政府的なスターを使うことはないというのだ。ジェニーは、今進めているドイルのドキュメンタリーの後には、ドイルと共同監督で劇映画を製作する企画があるという。製作費は、中国本土から集めるという。「それなら、今回のデモを取材した映画を作ることは、資金集めのリスクにならないの」と問うと、「これはデモの映画ではなく、香港の人々の映画だから。でも……」と口ごもってしまった。3泊4日の弾丸トラベルで、一国二制度の中国の2都市を訪れ、フィルムメーカーたちと会い、中間所得層が拡大し経済的に勢いのあるシンジェンとそれに反して経済的に中国本土に飲み込まれ、政治的な自由も奪われ閉塞感が漂う香港との差を肌で感じたのだった。映画『二重生活』監督・脚本:ロウ・イエ公式HP:宮台真司×ロウ・イエ監督対談日時:2015年1月24日(土)曽我部恵一×ロウ・イエ監督対談日時:2015年1月26日(月)

瀋陽軍区司令部の所在地。 ラサ市とは?goo Wikipedia (ウィキペディア) 。出典:Wikipedia(ウィキペディア)フリー百科事典。