タンパク質 変性 エントロピー

0000204826 00000 n 0000015588 00000 n 0000239686 00000 n 0000173451 00000 n 0000190012 00000 n 0000015332 00000 n 0000033963 00000 n 0000257984 00000 n 0000189838 00000 n 0000239503 00000 n 0000034455 00000 n 0000157416 00000 n 0000244508 00000 n

0000257594 00000 n 0000018279 00000 n に記載したように、タンパク質は熱変性前後で相分離しないことから、タンパク質の熱変性を相転移と呼ぶのが相応しいか検討の余地がありますが、過熱現象や過冷却状態といった状態が観測されることから、本稿では、相転移として捉えた場合の説明を行います。また、変性したタンパク質同士が凝集し、沈殿形成など相分離を起こすことがありますが、こういったケースは平衡論だけでは理解が困難なため、今回は取り扱わないこととします。天然状態のタンパク質は温度の上昇に伴い変性状態へと変化します。この過程を示差走査熱量計で観測した結果が図5です。ここで縦軸はExcess heat capacityとよばれ、リファレンスセルに投入した溶媒とサンプルセルに投入したタンパク質溶液との熱容量の差に対応します。 0000016557 00000 n 0000243911 00000 n ?1c9(,�&|�V*�-���U/i��5������;ۧ�b -超熱安定なタンパク質設計への新たな指針-理化学研究所(理研)放射光科学研究センター油谷克英嘱託職員らの共同研究チーム本研究成果は、超熱安定なタンパク質の設計に新しい重要な理論的指針を与えると期待できます。水の沸騰温度付近で生育する超好熱菌が生産するタンパク質は、常温生物由来のタンパク質に比べて高い熱安定性を示します。超好熱菌タンパク質には、荷電性残基が好熱菌や常温生物などのタンパク質に比べて異常に高い割合で存在していますが、その理由については明らかにはなっていませんでした。今回、共同研究チームは、MDシミュレーションにより、高温領域での熱安定性が良く解析されている3種の大腸菌由来CutA1変異型タンパク質の熱変性構造を明らかにしました。その結果、熱変性状態でも荷電性残基間の相互作用に差異が生じ、かなりの高温でも安定なイオン対が常温でのイオン対に匹敵する程度に維持されていることが分かりました。これらの現象は変性状態でのイオン対が変性構造の揺らぎを抑制して、変性状態の本成果は、国際科学雑誌『図 CutA1タンパク質の単量体(左)と三量体(右)の構造理化学研究所 放射光科学研究センター高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室私たちの体の主な構成成分の一つであるタンパク質は、20種類のアミノ酸が多数ひも状に連なってできており、それぞれ固有の形、立体構造を持っています。この立体構造は、タンパク質が生理機能を発揮するのに重要であり、アミノ酸の配列によって決まります。タンパク質は天然構造(N)と変性構造(D)が平衡(1式)にあり、熱力学的法則(2式)によって安定化されています。[N] ⇔ [D] (1)ここで、ΔこのようにD状態はN状態に比べて圧倒的に少ないため、D状態の構造研究は難しく遅れています。遺伝子操作技術が発展している今日、熱安定性の高いタンパク質を設計する指針が確立できていないのは、このD状態の構造が充分に理解されていないためです。一方、水の沸騰温度付近で生育する「超好熱菌」が生産するタンパク質は、常温生物由来のタンパク質に比べて高い熱安定性を示します。また、超好熱菌タンパク質には、側鎖がイオン化する荷電性のアミノ酸残基(荷電性残基)が、好熱菌や常温生物などのタンパク質に比べて異常に高い割合で存在しています。このため、荷電性残基間のイオン相互作用(塩結合)が、タンパク質の熱安定化に寄与していると考えられます。しかし、実際は塩結合とは関係のない多くの荷電性残基が存在しており、超好熱菌タンパク質になぜ異常に多くの荷電性残基が存在するのかは謎でした。そこで、共同研究チームは、異常に多い荷電性残基がD状態の構造に好ましい影響を与えている可能性を追求しました。例えば、ジスルフィド結合(S-S)は、タンパク質のD状態の自由度を抑制して、D状態のエントロピー減少によって安定化していると考えられています。つまり、2式のΔ油谷嘱託職員らは、2006年に変性温度(Td)が約150℃の超耐熱性を持つタンパク質を発見しましたこれらの3種の変異型はどれも三量体構造(注1)2006年7月13日プレスリリース「次に、3種の変異型の二次構造(αへリックス、βシート、βブリッヂ、ターン)について、MDシミュレーション中で平均どの程度維持されているかについて調べました。その結果、Ec0VV_6の場合、αへリックスは400Kでは1,000~1,400nsの平均で天然構造のほぼ4割を維持しましたが、450Kでは完全に構造破壊されたことが分かりました。しかしαへリックスを除く、βシート、βブリッヂ、ターンは4割近く維持していました(表1)。ただし、これらは天然構造と同じ残基での二次構造の形成を意味しているのではありません。一方、Ec0VV_6の450Kにおける MDシミュレーション中(1254.4ns)で、Asp20とArg88が非常に近い距離で適切なイオン対(塩結合)を形成していることが分かったため(そこで、Ec0VV_6に含まれる置換された6種の荷電性残基(Arg88、Asp39、Lys48、Lys72、Lys82、Lys87)について、1400nsのMDシミュレーション中に適切なイオン対のイオン間距離が0.6nm以下を占める割合を「占有率」と定義し、その対(ペア)残基と占有率(%)を表2に示しました。比較のために、天然構造(300K)でのそれらの塩結合の占有率も示しています。Arg88は、450Kの場合15種の適切なペア残基と合計120.9%の占有率で塩結合を形成しています。値が100%を超えているのは、同時に2種類以上のペアと塩結合を形成していることを示しています。6種の荷電性残基の平均の占有率は、450k、400k、300kでそれぞれ89.5、84.3、140.1%です。これらの結果は、450Kと400Kの熱変性状態では、天然構造(300K)に比べてそれぞれ63.4%と60.2%の割合で塩結合を形成していることを示しています。以上の結果から、450Kないしは400Kの熱変性状態でのEc0VV_6は、構造破壊の程度、二次構造の含量の差異に依らず、一定の割合のイオン対(塩結合)を維持していることが分かりました。生理的条件下で天然構造と平衡にある変性構造は、本研究で明らかになった、天然状態と平衡にある変性構造でのイオン対形成(塩結合)がタンパク質の安定性に重要な役割を果たしているとする発想は、今後タンパク質の安定性を理解する上で、また熱安定性の高いタンパク質を設計する上で重要な指針を与えるものです。特に、変性状態では天然状態に比べて大きく揺らいでいるために、変性状態でのイオン対形成は、特定のイオン対とのみ塩結合を形成する天然状態と異なり、イオン対を形成する残基が頻繁に交換されていると考えられます。そのため、変性状態のイオン対形成のための荷電性残基の配置は、必ずしも特定のペアとのイオン対形成を必要としないので、天然状態でのイオン対形成の設計に比べて、比較にならないほど容易なものとなります。このことにより、今後のタンパク質の熱安定化設計の指針は一段と精度の高いものになると期待できます。 理化学研究所 理化学研究所 広報室 報道担当 ギブスエネルギー(N⇄D ここで、Δここで、Rは気体定数、Tは絶対温度である。ΔΔ400K(127℃)と450K(177℃)のどちらも、3種の変異型単量体の構造破壊は時間がたつにつれて進むが、200~400nsになると破壊の程度は一定値に達したことが分かる。縦軸、RMSDは天然構造のC原子が加熱によりどの程度変化したかという指標。横軸は時間。αへリックスは、400Kでは1,000~1,400nsの平均で天然構造のほぼ4割を維持しているが、450Kでは完全に構造破壊されたことが分かる。しかしαへリックスを除く、βシート、βブリッヂ、ターンは4割近く維持していた。450KでのEc0VV_6に含まれるAsp39のCγ原子とLys87のCε原子間の距離の変化を示す。縦軸は目的の原子間の距離。横軸は時間。450K、400K、300K MDシミュレーション中でのEc0VV_6の6種の荷電性残基(Arg88、Asp39、Lys48、Lys72、Lys82、Lys87)が形成する塩結合(0.6nm以下)の占有率(%)を示す。450Kと400Kの熱変性状態では、天然構造(300K)に比べてそれぞれ63.4%と60.2%の割合で塩結合を形成していた。