海外勤務で気が付いたのは、柔道の世界への凄い浸透ぶりであった。 世界で柔道が最も盛んな国であるフランスは、私が研修を始めた1969年の時点で全国どこに行ってもどんな小さな町にも道場があり、老若男女が稽古に励んでいた。 年に1回開催される世界柔道選手権が、9年ぶりに東京で開催されています。8月25日から始まり、明後日9月1日で閉幕となります。日本発祥のスポーツで、世界と対戦しても負け知らずだった柔道ですが、近年世界各国で競技者人口が増えているため、苦戦する試合も数多くなりました。 私は、大学でやっていた柔道を外務省入省後も続け、在勤地のフランス、フィリピン、旧ソ連、韓国、ハワイ、カンボジア、デンマークのいずれでも、稽古、試合、デモンストレーションなど様々な形を通じて柔道と関わってきた。退官した今も週1回程度ではあるが稽古を続ける一方で、ホームページを立ち上げてフランス語と英語で柔道に関する日本の考えや取組みを世界に発信するなど、「口技」にも手を出すようになった。それには訳がある。若い頃は、結構辛い練習をやり遂げることに肉体的快感と精神の爽快感を覚えたりした。本省勤務時代にはまだ真っ暗な真冬の早朝に大学の寒稽古に通い現役の学生と一緒に汗を流したあと外務省に登庁すると、仕事にも「やるぞ」という闘志が漲ってきたものだった。数多くの怪我や体型の変更を伴う柔道を半世紀余り続けてきたことを振り返ると、やはり鍛錬を通じて、忍耐力や冷静さが身に付き、また、あまり外見や格好に拘らない質実を重んずる生活姿勢が養われた気もする。東北大震災の後、フランス柔道誌の L’Esprit du Judo は第1ページ全面に「我々は皆日本人だ」と題する異例の特別社説を掲げた。その中で、「柔道を通じて我々は日本に親近感を抱いている。(中略)日本は我々の一部であり、我々の日常や夢の一部である。我々は日本人と兄弟であり、彼らの苦しみは我々のものである。我々は皆日本人である。」と述べ、日本に同情と連帯のメッセージを送ってくれた。クリックすると画像が大きくなります。また、かつてプーチン前ロシア大統領(現在首相)を単独インタビューした元NHK解説委員の小林和男氏によると、大統領が自邸にある道場に氏を招き入れ「柔道は日本の伝統と文化に根差す哲学である」旨述べて柔道への傾倒を熱く語ったそうである。世界にスポーツは数多くあるが、肉体と精神の修養を同等に重要視するものは殆どない。単なる格闘技とは違う、柔道の精神修養的側面こそ、世界の多くの人が「柔の道」に進む背景の重要な要素である。この意味で、柔道は「世界の無形文化財」と考えるべきものである。柔道がこれだけ浸透したのは日本にとって喜ばしいことであるが、国際化に伴って柔道も当然ながら変化し、問題も生じてきた。ルールが変更を重ねて試合の内容も変わってきた。最近まで、足取りやタックルが増え一時は「ジャケットを着たレスリング」とまで揶揄されるに及んで、ルールが改定されてかなりまともな姿に戻ってきたが、まだ課題が残る。オリンピック以外に世界選手権が毎年行われるようになり、「世界ランキング制度」のもとで柔道の競技志向傾向が強まり、また、国際大会の様相にも商業主義的色彩が目につくようになって来た。その副次的結果として、勝った選手が派手なガッツポーズをするなど、選手の礼節が失われてきた。競技柔道志向の強まりに押されメダル獲得に注力するあまり、日本選手の行動にさえ礼節に欠ける面も出てきた。国際化の過程でルール変更とか競技重視や商業主義の強まりによって柔道の本質的側面が損なわれる場合には、日本が主導的に各国とも協力してこれを本来の姿に戻すことが重要だ。しかしながら、柔道に関しては最も経験や知見を備えているはずの日本は国際的なルール作りや大会の運営方針についてこれまで主導権を発揮してこなかった。2007年のIJF の理事選挙では山下泰裕氏の再選が阻まれ、アジア柔道連盟の会長選挙では日本の候補者で柔道の実績、識見とも立派な佐藤宣践氏がクウェートの候補に完敗するなど、国際柔道界での選挙で日本は敗北が続いた。日本のスポーツ界はおしなべて国際的発言力に欠けていると言われるが、少なくとも日本発祥の柔道についてはやはり日本が指導力を発揮してもらいたいものだ。本来の理念や特質を維持して柔道を発展させることが重要であり、それには日本の役割が極めて重要である。柔道衣や畳にも事欠きながらも柔道の精神的側面にも惹かれて世界の隅々で一生懸命稽古をしている貧しい国の何百万の柔道家たちの支援にも思いを致す必要がある。日本は、自国で始まり世界に発展している柔道の国際的「経営」に力を入れて関与すべきである。「世界の無形文化財」を適正に管理するのは日本の責任でもある。最後の海外勤務となってデンマークから帰国後、私は日本の柔道界に対し、国際的発信や行動の必要性を唱えてきたが、まだ大きな変化は見られない。一昨年、Judo International : Voice of Japan というサイト( 本来の理念を生かして柔道を国際的に発展させていくには、同じ志を持つ世界の柔道関係団体とも連携していく必要がある。日本はメダルの数も大事だが、柔道の健全な発展のために柔道の国際的運営にもっと力を入れるべきだ。そのためには、ともすれば実績重視傾向のある柔道界に内外の多くの人材を加えて「オールジャパン」で国際的な発言力や行動力を強化してほしい。 (2011年10月23日寄稿) コメントはありません。トラックバックはありません。 海外の反応 「母国で人気があったアニメ」1. なんと高校生の頃から、合気道に憧れていたんですよね。 海外の反応母国で人気があったアニメは何?俺の国では”私のあしながおじさん”が有名だった2. 年に1回開催される世界柔道選手権が、9年ぶりに東京で開催されています。8月25日から始まり、明後日9月1日で閉幕となります。日本発祥のスポーツで、世界と対戦しても負け知らずだった柔道ですが、近年世界各国で競技者人口が増えているため、苦戦する試合も数多くなりました。かつては日本の国技と言われていた柔道ですが、現在柔道人口が一番多い国は、日本ではありません。世界では、単なるスポーではなく、礼儀や規律、相手を尊敬する精神など道徳的、教育観点から人気が広まり、柔道精神が取り入れられています。来年の東京オリンピックでも海外から注目を集めることになるでしょう。訪日外国人向けメディア(英語)カテゴリの資料を一括DL※資料請求には無料の会員登録が必要です訪日外国人向けメディア(英語)カテゴリの詳細はこちら目次8月25日〜9月1日の8日間に渡って、日本武道館において「2019世界柔道(2019世界柔道選手権東京大会)」が開催されました。第3日の27日までが前半戦で、3つの階級で男子が金2、銅2、女子が金1、銀2、銅1となり、出場した9選手のうち8人が表彰台に上がっています。大会第4日の28日は女子63キロ級の田代未来選手が第4日の男子81キロ級でも、18年世界選手権銀メダルの藤原崇太郎選手は初戦の2回戦で世界ランク32位のウズベキスタン選手に敗れています。第5日の男子90キロ級では、初出場の向翔一郎選手が第6日の現在までに、最終日の9月1日には東京オリンピックの新種目となる男女団体混合戦の試合が予定されており、こちらにも注目が集まります。柔道は、オリンピック競技になっている数少ない日本発祥のスポーツです。1964年の日本で初開催された東京オリンピックで、初めて正式競技に採用されました。オリンピックにおける柔道の階級は、男子と女子それぞれ計7階級に分けられていて、トーナメント方式で戦います。来年の2020年東京オリンピックからは、新種目として1964年大会当時、日本勢は全4階級で3個のメダルを獲得するという柔道発祥の地としてのプライドを見せています。その後もその力を世界に示し続けてきただけに、国内開催2回目となる来年の東京オリンピックに期待と注目が集まりそうです。このデータでは、国際柔道連盟(以下:IJF)に登録する国200カ国以上の柔道連盟登録者数を、各国の柔道競技人口としています。日本以外の柔道大国としては、ブラジルが圧倒的ですが、次いで柔道人口が多い国は、日本発祥スポーツの柔道は、ただのスポーツ競技としてではなく、柔道を通して礼儀や相手を尊敬する精神が学べる教育の一環として根付いているため、ここまで世界中に広がり、人気競技になっているのでしょう。調査から3年以上が経過していますが、こちらの数字に基づき、各地での柔道風景をご紹介します。実際、ブラジルのリオデジャネイロで開催された世界柔道選手権大会では、金メダル1個を含む9個のメダルを獲得した成績があります。ブラジル国内では、数多くの学校などで教育の一環として柔道を取り入れていて、大きめの街には柔道教室もあります。ただし、ブラジルでは貧富の差が激しいため、柔道教室に行けない子供たちも少なくありません。地方政府が補助金を出して柔道の学び場を無料で提供する場合もあるといいます。競技人口でも黒帯所有者も多く、実際にオリンピックなどの世界大会でもメダル獲得する選手も多い国です。フランスでは、柔道が普及し始めてすでに100年ほど経過していますが、フランスの柔道愛好家らの間では、競技の面白さはもちろん、ブラジル同様に柔道の精神・教育的な価値への共感も、人気を後押ししています。特に親の中には、子供たちに身体の鍛錬だけではなく、礼儀や規律、道徳的な教育を柔道から学んでほしいと習わせる人もいるようです。また、勝ち負けにこだわらずに、柔道自体を楽しませる指導が行われているため、柔道好きが増え、応援側に回っても柔道に興味を持ち続ける人も多いそうです。今回の世界柔道から選手からは慣れない色の組み合わせに戸惑いの声もあがっていますが、全柔連は「観客やテレビの視聴者にとってより見やすい色を検討した」と説明しています。多言語化表示サービスカテゴリの資料を一括DL※資料請求には無料の会員登録が必要です多言語化表示サービスカテゴリの詳細はこちら7月21日、日本百貨店協会・インバウンド推進委員会は、2020年6月免税売上高・来店動向の速報を発表しました。新型コロナウイルスの影響で入国拒否の継続・対象の拡大が続き、6月の訪日外客数はわずか2,600人となりました。そ...今年3月から始まった新型コロナウイルス感染拡大防止のためのロックダウン(自宅待機)が終了したスペインでは、7月上旬から海外からの観光客を受け入れ始めました。それでも、スペイン政府はこの夏の外国人観光客数は昨年の半分になるだ...7月14日、観光庁は「観光ビジョン実現プログラム2020」を発表しました。このプログラムは、昨年8月から6月にかけて計6回開催された「観光戦略実行推進会議」を参考に、政府の今後1年を目途とした行動計画を示したものです。観光...緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。今回は、データ分析と事業開発の知見から、インバウンド戦略に有効なインサイトを...最新のインバウンド関連ニュースを役にたったら訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!無料・読者限定特典付き無料・読者限定特典付き訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを毎日配信!