タンパク質 変性剤 グアニジン

今回のテーマは「界面活性剤の特性と種類」と題して、界面活性剤の概論とタンパク質実験で使用する際に留意すべき点をご紹介します!▼もくじ界面活性剤は脂肪族や芳香族からなる非極性部分(テール)と極性部分(ヘッド)の両方を有する両親媒性の分子です(図1)。界面活性剤は図1 界面活性剤分子のイメージ図(上図)と両イオン性界面活性剤(CHAPS)の構造式(下図) 界面活性剤は水溶性の分子ですが、水溶液中での濃度が低いときは通常テールグループ(疎水基)を気相側に向けた状態で、その大部分が気液界面に集まります。水溶液中での濃度が高くなると、熱力学的により安定化するために互いに会合し、外側にヘッドグループ(親水基)、内側にテールグループ(疎水基)をもつミセルを形成します(図2)。図2 水溶液中の界面活性剤ミセルのイメージ図 界面活性剤の性質は実験で使用する際の濃度、反応温度、バッファーpH、イオン強度などによって異なります。非イオン性界面活性剤のCMCは温度上昇とともに減少し、イオン性の界面活性剤は対イオン(イオン性界面活性剤と反対の電荷をもつ低分子イオン)を添加するとヘッドグループ間の静電反発力が減少しCMCが減少します。また、ウレアを添加すると水素結合している水分子の構造がくずれてCMCが減少します。界面活性剤のうちSDS (Sodium Dodecyl Sulfate) のようなアニオン性界面活性剤やCTAB (Cetyl Trimethyl Ammonium Bromide) のようなカチオン性界面活性剤は変性作用をもち、タンパク質・タンパク質間の相互作用を破壊してタンパク質を変性させます。一方、TritonX-100のような非イオン性界面活性剤やCHAPSのような両イオン性界面活性剤、コール酸ナトリウムやデオキシコール酸ナトリウムなどの胆汁酸塩(アニオン性界面活性剤)は非変性的な界面活性剤として知られています。特に変性作用をもつ界面活性剤であるSDSは、CMC以下の濃度(モノマー状態)で膜タンパク質(疎水性)にも膜タンパク質以外の水溶性タンパク質にも結合します。SDSは分子同士が協調的にタンパク質に結合し、1分子のSDSがタンパク質に結合すると別のSDS分子の結合が促進されます。SDSがタンパク質に十分結合するとタンパク質は変性して高次構造が破壊され、全体としてほぼ均一に負の電荷を帯びた分子となります。その結果、タンパク質は分子量に依存した直鎖上の分子となります。一方、非変性界面活性剤であるTriton X-100は、非極性のヘッドグループを持っており一般的に水溶性タンパク質の構造や相互作用の破壊には向いておらず、膜タンパク質の疎水領域との結合を利用して膜タンパク質を分離するために利用されます。界面活性剤のモノマー分子はCMCより低い濃度でも水溶性タンパク質と結合します。界面活性剤の濃度が増加すると、CMCより低い濃度ではタンパク質への結合量が増加します。界面活性剤の濃度がCMCを超えるくらいでは、モノマー分子のタンパク質との結合と、界面活性剤の会合(ミセル形成)とが競合し(界面活性剤の除去については後述しますが、生体膜に存在する膜タンパク質の可溶化は、界面活性剤のモノマー分子が生体膜の脂質二重層内に分け入ることからはじまります。膜タンパク質の可溶化ステップは、使用する界面活性剤の量によっていくつかのステージに分けることができます(表1)。最初のステージでは界面活性剤が生体膜に入り込みます。界面活性剤と生体膜脂質とのモル比0.1:1~1:1においては、脂質二重層は(セミ)インタクトな状態で存在します(一部の膜タンパク質はこのとき選択的に抽出されます)。モル比が2:1に増加すると生体膜は可溶化されて界面活性剤と混合ミセルを形成します。混合ミセルには、リン脂質と界面活性剤で形成されるミセル、界面活性剤-タンパク質複合体のミセル、脂質-界面活性剤-タンパク質複合体のミセルが存在します。モル比が10:1になると、生体膜脂質-タンパク質間の相互作用はほとんど界面活性剤-タンパク質間の相互作用に置き換わります。界面活性剤は細胞溶解や膜タンパク質の抽出に有効ですが、抽出後のタンパク質を用いる下流のアプリケーションや実験では界面活性剤を除去しなければならない場合があります。例えば、界面活性剤で可溶化された膜タンパク質は脂質との相互作用が破壊されたことにより活性を失うことがありますが、抽出時に使用した界面活性剤をリン脂質や生体膜脂質と類似した脂質混合液で置き換えることによって再び活性をもつことがあります。また、タンパク質の活性が問題にならない場合でも、タンパク質定量やゲル電気泳動に供する際に、抽出時に使用した界面活性剤が適しておらず除去する必要がある場合があります。その他に、ショ糖密度勾配を利用した方法(さまざまな種類の界面活性剤が市販されており、多くの研究室で界面活性剤が利用されています。しかし、界面活性剤の純度や安定性については一般的にあまり重要視されていません。多くの場合、市販の界面活性剤には不純物が含まれています。不純物の中でも特に非イオン性界面活性剤によく含まれている過酸化物はタンパク質を不活性化することがあります(界面活性剤は、バイオ実験においてタンパク質の可溶化や変性のほか細胞からのタンパク質抽出などに幅広く利用されています。実験の目的や下流のアプリケーションに合わせて界面活性剤を選択するためにはそれぞれの特性を理解する必要があります。ここでは界面活性剤の一般的な性質を中心にご紹介しましたが、イオン性や臨界ミセル濃度(CMC)について理解しておくだけでも使用する界面活性剤の選択に役立つことでしょう!効率的なタンパク質抽出からウェスタンブロッティングの解析ツールまで、包括的にソリューションを紹介しております。PDFファイルのダウンロードをご希望の方は、下記ボタンよりお申込みください。タンパク質の抽出はタンパク質精製における... 第4回目の今回は、前回に引きつづき「総タ�... 細胞や組織からタンパク質サンプルを調製す... © 2020 Talk to us

非イオン性 MW(無水状態) CMC 2 (mM) 平均ミセル重量; Brij-35: 1199.6: … その天然状態の立体構造をN状 態(Native State)と 呼ぶ.こ のN状 態のタンパク質は加熱または尿素, 塩酸グアニジンなどのいわゆる変性剤によって,立 体 GEヘルスケア ライフサイエンスはCytiva(サイティバ)となりました。『 タンパク質は個々に特異な立体構造を有し,そ の特 異な立体構造が機能発現に重要な役割を果たしている. ただし、タンパク質を変性させることからタンパク質の機能分析には適しません。RPC担体に干渉するため、RPCによる分析にも適していません。 表2.6 タンパク質研究に広く使用されている界面活性剤. Location:添加剤を加えるとタンパク質の可溶性をさらに高めることができます。添加材の1つである界面活性剤は、親水性を示す極性基またはイオン基(頭部)と疎水性を示す炭化水素鎖(尾部)で構成される両親媒性分子です。水溶液中では、親水性の頭部と水分子との間に双極子-双極子相互作用またはイオン-双極子相互作用が生じ、疎水性の尾部はミセルという球状の構造体を形成します。この特性により、界面活性剤は疎水性物質を可溶化します。低濃度では界面活性剤分子は分離しますが、一定の濃度(臨界ミセル濃度、CMC)を超えるとミセルを形成します。ミセルは純粋な界面活性剤のみで存在することも、界面活性剤と脂質またはタンパク質の混合物で構成されることもあります(混合ミセル)。個々の界面活性剤のCMCは、分子の固有の特性、イオン強度および温度などによって決まります。 界面活性剤の分類は、一般に頭部の極性基の性質に基づきます。以下に例を挙げます。炭化水素鎖は、直鎖のことも分枝鎖のこともあり、柔軟鎖、剛直鎖という用語も広く使用されています。 タンパク質可溶化に使用可能な界面活性剤の選択肢は数多くあります。広く使用されている界面活性剤のいくつかを表2.6に示します。使用する界面活性剤は以下の条件を満たす必要があります。 例えば、SDSはタンパク質1 gあたり1.4 gでほとんどすべてのタンパク質を可溶化することが知られています (13)。SDSはプロテアーゼを含む大半のタンパク質と酵素を変性し不活化します。SDSは電気泳動(SDS-PAGE)およびウエスタンブロッティングに広く使用されています。ただし、タンパク質を変性させることからタンパク質の機能分析には適しません。RPC担体に干渉するため、RPCによる分析にも適していません。界面活性剤選択ではまず、過去に同様の事例がないか文献を検索します。次に可溶化の最初のステップに使用する界面活性剤を選択しますが、これは経験的に行われることが多く、何種類かの界面活性剤についてスクリーニングを行い、目的タンパク質の収量を分析します。界面活性剤/タンパク質比が重要であり、可溶化中には過剰量の、例えばタンパク質(および脂質)の量の2~3倍の界面活性剤を使用する必要があります。アーティファクトとタンパク質修飾を防ぐために、最高品質の「タンパク質グレード」の界面活性剤を使用することが重要です。例えば、頭部にポリオキシエチレンを持つ界面活性剤には、酸化を引き起こす過酸化水素と有機過酸化物が含まれていることがあります。 界面活性剤によって選択的に抽出される脂質とタンパク質の種類が異なり、可溶性力価も異なります。この差は、界面活性剤分画の違い(differential detergent fractionation)で明らかにされています (14)。 多くの場合、界面活性剤は抽出ステップにのみ使用すれば十分で、ワークフローの全ステップを通して使用し続ける必要はありません。ただし、膜タンパク質の場合、タンパク質と界面活性剤が混合ミセルの中で複合体を形成するため、全ステップに界面活性剤を使用する必要があります。Triton X-100などの芳香族を含む界面活性剤は280 nmで大きい吸光度を示します。N-ラウリルサルコシン酸塩などの長鎖カルボン酸や胆汁酸塩には、二価陽イオンと沈殿物を形成する性質があります。ただし、コール酸塩などの胆汁酸塩や、CHAPSやCHAPSOなどのコール酸塩誘導体は、二価陽イオンと沈殿物を形成しません。カルボン酸を含有する界面活性剤は、弱酸性pHでプロトン化して不溶性になる可能性があります。Triton X-100、Lubrol PXなどの非イオン性ポリオキシエチレンエーテルでは、温度変化に伴いミセル重量が変化します。温度が線形に上昇すると、ミセルが指数関数的に膨張します。このため、界面活性剤が曇点と呼ばれる温度点において非水相として分離します。カオトロープ剤は、生物分子内または生物分子間の水素結合を断ち切る物質です。低濃度のカオトロープ剤は選択的可溶化を引き起こします。濃度が高くなると、タンパク質の不活化につながります。抽出効率がもっとも高いカオトロープは、一般にタンパク質の変性をもっとも効率的に引き起こします。尿素およびグアニジン塩酸は広く使用されているカオトロープで、タンパク質の溶解性を高め凝集を最小限に抑えます。タンパク質を十分に変性させるには、一般に6 Mのグアニジン塩酸または8 Mの尿素が必要です。精製グレードの高い化合物を使用する必要があります。タンパク質サンプルの調製には高品質の抽出バッファーを使用します。また、微粒子を除去するためにろ過することをおすすめします。少量の場合には、 © 2020 Cytiva